統計データに関する報道の罠ー日経による家計調査
2025年9月 7日 (日)
日経電子版を購読していると、日経電子版マーケット コラム「NQNスペシャル」というものに出くわします。NQNは日経QUICKニュースの略のようです。日経QUICKというのは、主に投資向け情報サービスです。つまり金融のプロが広く各種業界の情報をチェックしてられないので、こういうところでサクッと基本情報を得て、個々の企業の財務事情などに踏み込むわけです。
NQNに先週こんな記事が出ました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL208FL0Q5A820C2000000/
キャットフード高騰、イヌ用より伸び際立つ 飼育数増加で需要
きっかけは総務省の統計データである「家計調査」の2025年6月分です。モニターとなるのは国民です。アンケート用紙を受け取ったモニターさん(なったことが無いので分からないけどランダムに送られてくるんでしょうね)は、自分の家計としてどういう費目にいくら使ったかを手書きで記載し、送り返します。国はそれを集計するわけです。
費目には「ペットフード」があります。その額が1000円超えて大きく伸びてるということです。記事では、猫の飼い主にインタビューし、最近高くなってる伸びてるとも。
この記事に対し、SNS上では「ありえない!」という反応を多数見かけます。「5000円はする」という声も。
ごもっとも。我が家も老犬のケアの時は桁が違いました。今は元気だけど少食な小型犬で、総合栄養食であるフード(但し少々高いです)にしていますが3~4000円辺りです。
では、なんでこんなズレが出ているの?なんでNQNはそのズレに違和感を持たないの??
一言でいえば、家計調査は正しく調査しデータ公表しています。納得感もあります。問題なのは記事で、データの解釈の仕方を間違っているから。
家計調査は、モニターさんに用紙を送ります。
用紙をもらった家が犬・猫を飼っているか否かの記入欄はありません。
飼い主は用紙にペットフードという費目があるので、ペットフードに使った金額を書き込みます。
総務省統計局はこの金額を全部足し算します。で、モニターさんの世帯数で割ります。
それが月1000円超えた、ということです。
この方法では、ペットの飼育頭数が急変動しない限り、ペットフードの毎月の上下変動が見えますので統計局の出すデータとしては正しいです。ペット飼ってるか否かに踏み込んだら家計調査は他も調べないといけないことが増えて破綻しますので。
ゆえに、解釈する側がペットフードへの支出額をそのまま実数のように語ってはいけないわけです。
今回の1000円を超えたというデータのモニターさんは、「二人以上世帯」とのことです。日本に二人以上世帯数は、およそ3600~3700万ほどあるようです(今のところの推定)。
一方、犬猫はおよそ1500万匹飼われている(こちらの方がかなり怪しい推定値)のですが、年々単身世帯で飼っている人が増えているので(特に猫は)、二人以上世帯では1200万匹が飼われてると仮定します。
つまり、家計調査での数値は、理屈上は「1200万匹に対して家庭がペットフード購入の形で支出した総額を3600万で割ったもの」です。
感覚として、家計調査で1000円というなら、実数は3000を超えた辺りにあるのだろうと推測できるわけです。
我が家はまさに平均値付近ですね。
以上から、家計調査の数値をそのまま語っているこの記事・報道には要注意です。ビジネスでこういうデータを鵜呑みにするような人はいないと思いますが、金融機関やVCさんなどペット業界に普段全く知見の無い人たちで、かつペットなんか飼ったことないという人は今は多数派だと思った方が良い。そういう人を相手に記事を書いてる人もまたペットなんか飼ったことも無いということと予想します。分かんない人が、分かんない人向けに、サクッと統計の表面だけさらって記事にしている。
だからこそ、この手の報道は疑ってかかり、一次データにちゃんとあたり、アンケートはどういう手法で分析しているのかの式まで確認した方が良いです。
そうすれば犬猫の飼育頭数がいかにいい加減な計算式で出してるか、数年前に式が変わったとたんに過去のデータアクセスができなくなったとか、ブラックボックス過ぎて、、、が見えてくるかと。
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